FJC施設見学会#4
去る14日、昼食介助に一応の区切りをつけた「ことにして」職場を飛び出し、約1時間自転車カッ飛ばして太平洋へ抜けた寒冷前線へ吹き込む突風に阻まれつつ…日本の気候は最低最悪だ約1年振りの見学会へ行ってきました。
処は島田市にあるほたるの丘。計画当時は「県下最後の大規模施設」と言われた最近はまた見直され、新設が取り沙汰されているとか特別養護老人ホームで、入所者様に「(人生の最終章は)旅行に出掛けた気分で」と、徹頭徹尾平安調和様の内装が施され旅館を思わせるゴ~カな造りでした。事務局長の案内で館内を回った中で目を惹いたものを幾つか紹介していきましょう細かいことだがAQUOS SHOT、レンズのケラレが目立つなァ。
外に露出が合ってしまいましたが中はもっと明るいです、のパブリック。「節電策にも」とどの部屋も窓が大きく取られ、空間の広がりを感じさせます、また「心理的によろしくない」とカーテンは一切使わず「首を吊った事例あり」と、遮光は全てロールスクリーンでした。ズリ座位を防ぐ可く座布を工夫した椅子は飛騨産業製その重さに加え床がクッションクロスなので滑りにくいのが弱点、アームレストの突き出し量は「立ち上がりのプッシュアップを助ける」絶妙なもの。座敷スペースは欠かせませんね。画像には写っていませんがキッチンは対面型、勿論車椅子対応。同テーブルの一部は跳ね上げ式で配膳のほか使わないときは畳んで床を広げ、配膳車やソファーの置き場所にもなるとか。副食は厨房で作る一方でご飯はここで炊くそうで、匂いで生活のリズムを演出するのだそうです。夜勤は2ユニットを1人で看る、とのことでしたが双方の物理的連携は配慮こそあれ鶴舞乃城ほど徹底されておらず、局長自ら「ユニット(少人数ケア)の問題は職員が疲弊すること」と発言しつつもそれへの明確な回答はありませんでした。
トイレは全個室完備。画像とは左右勝手違いの部屋もあり、どちらの片麻痺にも対応します。広さ自体は910×1820ながら折り戸+フランス落とし個室入り口(画像左端・写界から外れたところがすぐ)が開いていてもコイツを開くことで目隠しになるでフルオープン化、側方からの介助を容易にしています。壁には鉄板が仕込まれ、利用者様に合わせた手すりの追加もOK。このほか行事葬儀もできるゾ会場となる1F・地域交流室脇のトイレには「前屈み姿勢を助ける」前面用跳ね上げ式アームレストも設けられていました。コールのボタンに注目、あの位置は「ズリ落ちても押せるように」ですって。
ヒノキの浴槽は「青山式のパクリ、アチラの半値」。防腐剤が塗布されているのでメンテナンスは比較的容易ではないかと思われます。実は入所者様の重症度がじわり上がったことで徐々にアマノのソファー浴槽へ入れ替わっているそうで、「そのための配管は全ユニット完備」と胸を張っていました。つまり利用者様本位を謳ってはいてもソレを守るソフトウェアは存在しない木製浴槽を活かす職員への技術指導の話も無かった、というワケです。リフト浴は装置を床にドン、と置くのではなく床を掘り込んで舞台で言うところの「奈落」洗い場との段差を解消、職員用介助スペースも併せて設けられ、シャワーチェアの利便性が重視されていました、いずれにせよ入る人を選ぶシステムでしょう。
本施設で力を入れているのは除菌。自然塩と水道水とを専用機器こちらは一般家庭用で生成した次亜塩素酸水生成済のヤツを噴霧する機器なんてのもあるが館内随所に備えられ、手洗いや掃除、汚物消臭に活用しているそうです。衣類はアルカリ水で洗い、次亜塩素酸水で濯ぐ画像では判り難いが、左の洗濯機の上にある小さなモニターがアルカリ水/次亜塩素酸水切り替えの操作盤ので洗剤は基本使わない洗剤臭が無いと「ホントに洗ったの?」と訝しむ御家族様もいるので「演出程度」に入れることもという徹底振り。
「私は病院出身で管理大好きですので」画像にピンとキた貴方は鋭い、個室内に設けられたコール操作盤です。通常はスイッチのケーブルを受けるジャックと作動ランプだけじゃありませんか、復旧ボタンがここにあると職員が否応なしに応対せざるを得なくなるんですねェ。隣の巡視・排泄ボタンを押すとそれぞれが履歴に残り!1人夜勤ではあやふやになりがちな勤怠チェックになる仮に利用者様が亡くなられても直近の操作履歴があれば「急なことだった」と言い張れる。特養と言えども見落としがあれば変死扱いになりますものねェと同時に担当職員が後に記録を起こしやすくするためでもある「1処置・1手洗い・1記録」ね。そう言えば私も店のレシート見ながら日記を書くことがあるなのだとか。操作の積み重ねがお金を戴く根拠になり、頑張った人が正当に評価されるであろう点は理解できますが、それはこれまで家族的に行われてきた介護の世界に競争原理・立身出世主義を持ち込むことであり、介護保険の本質・進む方向を指し示していると思います。
全般的印象は「でっかいグループホーム」、まず病院で活かしたくなることが多く羨ましく思った反面、ともすればサービスに人を奉仕させる危うさが、とは被害妄想かなァ。「規則は絶対」と譲らないあたり現場から規則を変えさせることも見越した鶴舞乃城とは対照的でした法人が目指すものにそぐわない利用者様・御家族・職員がいることも…直接的表現は避けていたが。介護保険施設ですので要介護認定こそ大前提ではありますが元気な人が比較的元気なうちに入る、老後の新たな生活ステージを提案する、といった主張がそこここに散見され、障害を負った方の生活再構築を働きかけるのではないあたりに病院・老健との明確な違いを感じました。局長が病院で曖昧なままだった・出来なかったことを実現させたい思い、あまり儲かるとは言い難い介護業務で事業体を如何にして守るかに心を砕いたか、も。
しかしながら職場環境としては魅力を感じませんでしたね、明らかに都会のやり方です。「都会の良さは何でもあるところ・都会のマズさは何でもしてしまうところ←→田舎の良さは何も無いところ・田舎のマズさは何もしないところ」介護のことは一切忘れ、「ここは旅館である」と決めてかかればやり甲斐はあるのでしょうが、事実局長自ら「文句があるなら『自分で会社作れ』と言いたくなる」と本音が出るほど職員の定着は芳しくなく、品川か台場あたりで背広着てた人を引っ張ってきて訓練させたほうがうまくいくのではないでしょうか。職人・ゲージツ家肌の人は間違いなく局長と衝突するでしょ!?上から目線で熟慮に熟慮を重ねたであろう施設・組織運営なだけに現場で職員が考え・決めるレンジは狭いように見えます利用者様の生活パターンから風呂で身体を洗う順番に至るまでマニュアル化、職員間で徹底させるそうな。内容がどうであれ本人の意向を優先させ、もとより「それから先」を考えなくてもいいのである意味当然だが、傍からは。また「法人としては将来高齢者向け住宅を整備、他地域からも仕事をリタイアした人を呼び寄せ、ここを老人の町にしたい」との話もありました。4階ベランダに立つと眼下には新幹線、山の端には空港直接滑走路は見えないが飛行機の離発着は手に取るように判る、と、都会とのつながり・起点は東京であることを意識させるに十分なロケーションでした。
老いが近代・文明を手放していく過程であるとすれば、近代化・文明化が全てを解決すると叫んで止まないととれるほたるの里は真に人生の最終ステージたりえるか?日本全体では同じところへ向かっているように見えても、都会と田舎は進む道が違う、島田の地でそのズレをどうすり合わせるのか?解決には少なくとも1000年かかるだろう…釈然としないものを胸に職場へ戻りました。
「旅館はたまに行くから楽しいのよ、あたしゃ鷹乃台のボロアパートのほうが和むのさ」。
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